「発毛」と「育毛」の違いはなんでしょうか?

親和クリニック 大河内医師

親和クリニック
医師 大河内 裕美

最近ではインターネット上で、さまざまな発毛・育毛に関する情報が飛び交っています。
その中で「実際に効果があるのは何か」「自分にはどんな方法が合うのか」と悩んでいる人も多いでしょう。
そもそも「発毛」と「育毛」とでは意味が異なるので、対策法が変わってきます。
しかし、この2つの違いをきちんと理解している人は意外と少ないようです。
そこで今回は、発毛と育毛の違いについて解説していきます。

発毛と育毛の違いとは?

発毛と育毛の違いとは?

薄毛対策に取り組む際に、自分が選択すべきなのは「発毛」ケアなのか「育毛」ケアなのかを把握しておくことは非常に重要なことです。
ここで、発毛と育毛の違いについて知っておきましょう。


発毛と育毛の違い

「発毛」とは新しく毛を増やすことです。一方、「育毛」は今ある毛を太く丈夫に育てていくことを指します。
つまり発毛ケアとは、既に毛が抜けた毛根に再び毛が生えるべく頭皮の改善をすることを目的としたものです。
それに対して、育毛ケアでは今ある毛が途中で抜けないよう頭皮や髪の毛に働きかけていきます。

どちらも薄毛を改善するアプローチであることには変わりないのですが、薄毛の進行具合によっては取るべき対策法が異なります。
いくら育毛ケアに励んでも、それだけでは髪の毛は増えません。
反対に、せっかく発毛ケアで髪が生えたとしても、育毛ケアがおろそかであれば途中で抜けてしまう可能性があるでしょう。
発毛させた髪の毛を、太く健康的に育毛させることが大切です。


そもそも薄毛になる原因は?

薄毛になる主な原因として以下の3つが挙げられます。


5αリダクターゼの分泌量が多い

AGAの直接的な原因となるのは、男性ホルモンの1種であるジヒドロテストステロン(DHT)です。
毛根部分には毛乳頭という器官があり、毛髪を成長させる重要な役割を担っています。
しかし、毛乳頭でDHTが生成されると、ヘアサイクルが乱れて薄毛が進行します。
このDHTの生成に欠かせないのが、酵素5αリダクターゼです。
5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型があり、Ⅱ型が薄毛を引き起こす主な原因と考えられています。
したがって、5αリダクターゼの分泌が多い体質であれば、AGAを発症する確率が高くなるでしょう。


ホルモンバランスが乱れる

女性の場合は、ホルモンバランスの乱れが原因で薄毛になることがあります。
もともと女性の体内にも男性ホルモンが存在していますが、妊娠や出産などでホルモンバランスが乱れると、男性ホルモンが優位になる場合があります。
すると5αリダクターゼの働きが活発になり、DHTが生成されて脱毛につながるのです。
ただし、ホルモンバランスの乱れによる薄毛は一時的な症状であるため、しばらくすると改善するケースもあります。


髪の毛の成長に必要な栄養素が不足している

栄養不足や血行不良などによって髪に必要な栄養素が行き届かなくなると、髪の毛が弱く細くなってしまうことがあります。
頭皮の大敵である栄養不足や血行不良は、ダイエットや偏食、運動不足、睡眠不足などから起こります。
薄毛が気になり始めたら、まずは生活習慣を見直してみましょう。

発毛を促進させる方法1:セルフケア

発毛を促進させるセルフケア

新たな髪を増やしたいという人のために、発毛を促進させる具体的な方法をご紹介します。
食生活やストレス緩和などの生活習慣と薄毛の関連性については、医学的には証明されていませんが、生活習慣を改善することが薄毛予防や症状改善につながると考える説があります。


発毛をサポートする栄養素をバランス良く摂取する

発毛を成功に導くには、植物を育てるのと同じようにまず土壌づくりが大切です。
髪の毛の成長に必要な栄養素をしっかり摂取しましょう。
特に髪の毛の原料となるタンパク質と、タンパク質の合成を助ける亜鉛を含む食品は積極的に取り入れたいものです。


タンパク質

タンパク質は体内で一度アミノ酸に分解され、髪の毛の元となるケラチンに変化します。
体内で作ることのできない必須アミノ酸は食事から摂らなければなりません。
必須アミノ酸が含まれた良質なタンパク質を意識して取り入れることが大切です。
卵や乳製品、大豆などに多く含まれます。


亜鉛

髪の主成分であるケラチンの生成をサポートする栄養素です。
つまり、いくらタンパク質を摂っても、亜鉛がなければ髪を育てることはできません。
亜鉛の含有量が多いカキやレバーを摂取して、不足しないよう心がけましょう。

このほか、頭皮環境を整えるビタミンAやB、Eなどの栄養素をバランスよく摂ることが、発毛促進のカギです。


頭皮を清潔に保つ

頭皮環境が悪いと、髪の毛に栄養が行き渡らなくなったり、皮脂が詰まって炎症を引き起こしたりして、発毛しにくくなります。
定期的に洗髪を行って、頭皮を常に清潔な状態に保ちましょう。
髪を洗う際は、シャンプーを使って髪と頭皮の汚れをしっかり落としていきます。
指の腹を使って優しくマッサージするように洗うのがポイントです。
すすぎ残しがあると頭皮トラブルの原因になるので、最後にきちんと洗い流しましょう。

洗髪後は「ドライヤーは髪を傷めるので、自然乾燥がいい」と考える人も多いかもしれませんが、生乾きの時間が長くなるため、雑菌が繁殖する恐れがあります。
髪を洗ったら、タオルで髪と頭皮の水分を拭き取ったあと、ドライヤーで乾かしましょう。


正しい生活習慣を心がける

不規則な生活習慣を送っていると、血行が悪くなり、髪の毛に栄養が行き届きにくくなります。
ストレスの蓄積や睡眠不足、運動不足は身体に良くありませんし、髪の発育にもマイナスです。
十分な睡眠時間を確保し、定期的に運動を取り入れるなどして、ストレスが溜まらない生活を送りましょう。


市販の発毛剤を使用する

自分でできる発毛対策として、ドラッグストアや薬局などで発毛剤を入手し、薄毛が気になる部分に塗る方法があります。
ここで間違えてはならないのは、育毛剤を購入しないことです。
育毛剤には毛を生やす効果はないので、必ず発毛剤を選んでください。
事前に薬剤師の説明を受けて、使い方や副作用についてきちんと理解した上で、用法・用量を守って使いましょう。

発毛を促進させる方法2:クリニックでの治療

クリニックでの治療

自宅でケアしても発毛に変化がみられないのであれば、クリニックでの治療を検討してみてはいかがでしょうか。
薄毛治療専門のクリニックでは、それぞれの症状に合った適切な治療を行ってます。
内服薬や外服薬を使った治療では、毛髪サイクルの改善を促すことで発毛をサポートしています。
また、薄毛を根本的に解決する方法として植毛があります。


内服薬による治療

プロペシアやザガーロなどのAGA内服薬を使用する治療法です。
薄毛を引き起こす5αリダクターゼの働きを抑制して、発毛を促進する効果があります。
5αリダクターゼにはⅠ型・Ⅱ型の2種類がありますが、プロペシアはⅡ型リダクターゼに作用する薬です。一方、ザガーロはⅠ型・Ⅱ型の両方に効果があります。
プロペシアとザガーロを服用すると、まれに副作用が出るリスクがあります。
臨床試験において、プロペシアの副作用発現率は4%、ザガーロは17.1%という結果でした。
いずれも性欲減退や勃起不全などの副作用が報告されています。


外用薬による治療

ミノキシジルが含まれた液剤を薄毛部分に直接塗布する方法です。
ミノキシジルとは医学的に発毛効果を認められた唯一の成分です。
ただし、医薬品である以上、副作用の可能性はゼロではありません。
特別調査によると、ミノキシジル剤の使用者のうち8.82%に、かゆみや発疹、循環器系の疾患、倦怠感、食欲不振などの症状がみられたことがわかっています。


植毛

植毛とは、薄毛の気になる部分に毛を移植する施術です。
植毛には自毛植毛と人工毛植毛があり、自毛植毛では自分の髪の毛を、人口毛植毛では人工繊維でできた人工毛を、薄毛部分に植え付けます。
人口毛植毛の場合、移植する毛の本数や仕上がりのデザインの自由度が高く、希望のヘアスタイルが叶うメリットがあります。

しかし、人口毛は身体にとって「異物」であるため、皮膚トラブルにつながりかねません。
自毛植毛であれば、自分の毛を使うので拒絶反応が起こりにくく、移植した毛が定着し、半永久的に髪が生え続けます。
また、人口毛はメンテナンスの手間もそれなりにかかりますが、自毛であれば基本的にメンテナンス不要です。
総合的に判断すると、自毛植毛が望ましいでしょう。

自分の状態に合わせた治療法で薄毛を解決しよう

自分の状態に合わせた治療法で薄毛を解決

薄毛対策で大事なことは、自分の症状に合った治療法を選択することです。
薄毛の治療法として、よく育毛や発毛といった言葉が使われますが、この2つは似て非なるものです。
薄毛を根本的に解決したいのであれば、まずは薄毛専門クリニックにて治療を行うことです。
発毛治療や育毛治療もトータル的なコストは自毛植毛に比べて相当かかりますので、専門医の判断のもとトータルコストも含めた総合的な判断が必要となります。

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